ダス ガストホーフ ディ エルフェ
第六章    妖 精 の 館


     古びた木製のドアはカウベルの代わりに、老齢に相応しい軋みで
     一同を迎えた。蝋燭の灯された室内の淡い光が、時の重みを
     影として壁と床とに焼き付ける。
      羊皮紙、燭台、絨毯、甲冑、弓、剣、杯、…。
     縫うように古の品々の林を歩くエーシュはひらりと棚に舞い上がると、
     一声鳴いた。数瞬の沈黙を渡り節くれだった杖をついた長衣の老人が、
     垂らされた黒い幕の影から現れた。
     その指には赤い宝珠が炎の揺らめきを写して輝いていた。
     
     

[ 風の心 ] or NEXT STORYor GRAPHIC(挿し絵)



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