デァ ワーゲン ヴェットラオフ
第四章    カーチェイス


     城門を駆け抜けるエンジン音に夜の風が喧騒に染まった。
     疾駆する車体が風を押し退けると不平とも思える唸りが生じ、
     それを気に止めること無く車輪が回転を続ける。
     カーブを曲がり切れずに激しいテールスライドを繰り返す車体が激突し、
     田村の悲鳴と運転手を非難する金属の激突音が、飛び散った破片と共に、
     つかの間の光に照らされた路面に反響しては消えていく。
     その度に後部座席を転がる不破が身を起こすとその目には、街灯の作る
     光の列が写った。
     
           

[ 風の心 ] or NEXT STORYor GRAPHIC(挿し絵)



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